2008年11月23日日曜日

浦和レッズ

 案の定の三日坊主。早いものでエクスカーションから帰ってもう2週間が立つ。帰ってその日のうちに筑波の学会へ。その週は、種々の研究教育外の業務、卒論ゼミ、学外での会議をこなし、週末は編入学試験。その後は今日の浦和レッズ観戦者調査の準備。あっという間の2週間であった。
 レッズと大学との共同で行う埼玉スタジアムにおける観戦者調査は、これで3度目となる。同僚のK先生の誘いで、彼女とともに関わっている。レッズのサポーターとしてスタジアムに訪れる人は、年齢や性別をはじめとしてどのような人なのか、どこからどのようにしてやってくるのか、さらに彼らはレッズに何を求め、また地域にどのような影響を与えているのか、、、アンケート調査を通して明らかにしようとするものである。
 今回の調査中に、読売新聞の取材を受ける。先にさいたまサッカー100周年記念展示として、さいたま市立博物館、県立歴史と民族の博物館とともに、大学でも「サッカーdeきずな」という展示を行った。その後、コムナーレでサッカーカンファレンスが開催された折に、同展示を出張して行ったのだが、記者はそれをみて興味をもち、話を聞きに来たという。取材中にも、16人のバイト調査員による調査(アンケートの配布)は行われていた。今回は、アンケートを帰宅後に記入し郵送してもらうかたちをとるため、スムーズに事が進んだ。レッズのサポーターの方々が非常に協力的なこともある。チームへの熱い思いが感じられる次第である。
 試合開始前に無事、調査終了。対エスパルス戦をバイトの学生らと弁当を食べながら観戦する。前半は0対1。ボールをもつ選手の周りの動きがない。そして苦し紛れのパスは相手にわたる。後半は、敵の運動量が落ちる中で、選手個々の力で局面を打開し、チャンスが生まれるようになる。左からのクロスを闘利王が決めて同点。しかし、前がかりになったところをカウンターで失点してしまい、ジ・エンド。サポーターもフラストがたまっていることであろう。アンケートの回収がどの程度になるか不安である。


 今回のアンケートでは、試合前後に浦和駅周辺に立ち寄った方に、行き帰りの経路を地図に書き込んでもらうことをした。実際にどうなのか、観察すべく帰宅後、自転車にて浦和駅前に向かう。スタジアムからのバスで、また、電車にて、続々とサポーターがやってきては散ってゆく。伊勢丹やコルソ、イトーヨーカドーに入っていく家族連れ、そして袋を抱えて出てくる夫婦、、、サッカー観戦が日常生活に組み込まれている姿をそこに見る。一方で、裏門通り、サポーターが集まることで著名な酒蔵力とその周辺に向かう数人からなる集団もいる。力や周辺の飲み屋、カフェで試合後の時間を仲間と過ごすことになるのであろう。
 GPSロガーによる行動の把握はすでにあちこちで試みられているが、同様に、GPSロガーにて、サポーターの行動を把握できないものかと思案。試しに、今日一日、ガーミンのGPSmap 60CSxを携帯する。帰宅後に軌跡を確認すると、車での移動中は正確に補足されていたが、埼玉スタジアム内、および浦和駅前周辺では、誤差が大きかった。後者におけるズレは痛い。建物への出入りが多かったからか、あるいは建築物が電波を遮蔽するからか。



 以下、菊地俊夫編著(2008)『観光を学ぶ―楽しむことからはじまる観光学 (めぐろシティカレッジ叢書 9) 』二宮書店. の「地域の祭りと観光」の中で、サッカー観戦を一種の祭りとして書いた駄文の一部。

祭りとしてのスポーツ:浦和レッズ
 1993年に発足した日本のプロサッカーリーグであるJリーグは、地域社会と一体となることを目指し、ホームタウン制を採っている。特定の市区町村をホームタウンとし、そこで全主催ゲームの8割を行わなければならない。繰り返し行われるホームゲームの開催日には、スタジアムのゴール裏ではサポーターが揃って応援し、試合後には街に繰り出していく風景がみられる。現在、Jリーグにおいて最も観客を集め、熱狂的な応援で知られる浦和レッズの場合はどうであろうか。
 現在、さいたま市に属する旧浦和市は、市内の高校が幾度となく全国優勝を重ねてきたことから、「サッカーのまち」として知られてきた。Jリーグ発足時、ホームチームを求めていた旧浦和市とホームタウンを探していた三菱重工サッカー部が出会い、浦和レッズが誕生することになる。三菱重工サッカー部には旧浦和市をはじめとした埼玉県出身の選手は多くいたが、特に旧浦和市と関係はなかった。それが、今では、地域に密着したチームの典型として語られるようになっている。
2006年12月、埼玉スタジアムで行われた対ガンバ大阪戦において、レッズファン・サポーターに対して浦和レッズと埼玉大学によって共同のアンケート調査が行われた。これによると、観戦者の3割をさいたま市が占め、さらに4分の3を埼玉県が占めており、ホームタウンにおいて浦和レッズが定着しているだけではなく、埼玉県全体からも支持されていることがわかる。加えて、東京都からが1割を超えるのをはじめとして、埼玉県外の関東からが2割近くに達しており、浦和レッズのファン層は埼玉県を超えて広がりをみせている。スタジアムを訪れる彼らが浦和レッズを好きな理由として、「スタジアムの雰囲気が良い」、「ゴール裏のサポーターが魅力」が上位に挙げられており、単にサッカーを観戦するだけではなく、ともに応援し、その独特の雰囲気に浸ることが魅力となっていることがわかる。赤いユニフォームを着た多くが一体となって、手を振りかざし、応援歌を歌う、それはまさに祭りの風景であり、祭りで得られる同じ興奮をスタジアムで味わっているのである。そして、集まってくるサポーターが、さいたま市に限らず広範囲にわたっていることは、YOSAKOIソーラン祭の場合と同様であり、祭りへの参加と観光とが重なり合う現代の祭りともいえる。
 スタジアムで観戦を終えたサポーターの一部は街へと繰り出していく。とりわけ浦和駅西口周辺には、普段よりレッズのフラッグがここそこに掲げられているが、そこに赤いユニフォームを着たサポーターらが行き来し、にぎわいをみせる。祭りは、スタジアムの中にとどまらず浦和の街にまで広がり、それは繰り返し訪れる。

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